トラブルを防ぐ竣工検査の意義
火災が発生している太陽光発電所のニュースを見る機会はほとんど無いが、規模の大小はあるものの、こと発火については私が今まで見聞きしてものは決して少なくない。また、台風や暴風などにより架台・基礎などが吹き飛ばされていた太陽光発電所の映像は記憶に新しい。
2016年末より太陽光発電にも使用前自主検査が義務化されている。ここでの自主検査とは(前提として第三者機関が実施する必要があることを除けば)、建築で言うところの“完了検査”に近いものといえるのではないだろうか。
日本の電力供給を担う柱として、太陽光発電による安定した電力供給の為の品質担保に国が本腰を入れてきた格好となったが、この検査が形骸化せず、有用に働くことを期待したい。
使用前自主検査は関連法規に基づく検査となるのだが、もう少し網羅する範囲を広げてもよいのではないかと個人的には感じている。
当たり前の話だが、竣工時にはケーブルやブレーカーを含めた各コンポーネントが設計通りに導入されているのか(設計の確認は別途実施されていることが前提)や、ボルトナット、端子部のマーキングや各配線の極性、すべてのケーブルの絶縁抵抗値など、最低限、安全に関わる基本的なところは必ず実施されるべきだ。
ないがしろになりがちな竣工検査
下記の表はドイツの保険会社が作成した、同国の太陽光発電所における不具合事例の統計である。積雪や雹(ひょう)など、ドイツ固有と思われる事象による不具合も多いが、過電圧や火災などは、設計の確認や竣工検査によって防ぐことが可能なものも相当数含まれていると思われる。発電所の不具合は未然に防ぐことができるものは多い。
ひるがえって現実では、プロジェクトの資金繰りや税制制度の期限などにより非常にタイトなスケジュールで工事を行っている発電所も多い。竣工検査どころの話ではなく、正に「つくるのに精いっぱい」というプロジェクトが存在する。
アドラーソーラーワークスでも、第三者として竣工検査を請け負うこともあるが、工事の品質は千差万別である。なかには竣工検査を発注しているからという理由で殆ど自主検査を実施していないという施工会社もあるが、本来的には施工側、第三者のダブルチェックで不備を限りなくゼロにするのが望ましいだろう。
太陽光発電所の売電料金は国民全体が負担しており、その意味で太陽光発電所は事業主だけのものではなく、国の資産であると言えるのではないだろうか。太陽光に関わるすべての人に発電所の健全な運営を意識してもらいたい。