太陽電池のEL検査、その必要性とメリットとは
太陽光発電におけるEL(エレクトロルミネセンス)検査とは、太陽電池に電界を印加することにより、半導体内に入った電子と正孔が再結合して発光したものを撮影して、その画像を分析することである。
電界を印加すると、電気が流れている部分は発光するが、流れていない部分は暗いままである。そのため、外観からは判断できないものの、発電量の低下につながる可能性があるセルのクラック(亀裂)や、インターコネクターの断線・接続不良などを一目で発見できるというメリットがある(図1)。
従来、研究機関のラボやメーカーの工場などのインラインでしか実施できなかったEL画像の撮影だが、近年は現場でも計測できる機器が複数登場している。こうしたEL検査機を所有するEPCやO&M業者も存在している。
不具合の証明に効果を発揮
実際の保守の場面において、EL検査はさまざまな不具合を証明するのに適しているが、IVカーブ計測器、サーモグラフィカメラや配線路探査器などで特定することも可能な不具合も多く、現実的には必須とまでは言い難い。
ただし、不具合の証明には有効である。メーカーとの交換交渉において、EL画像によって不具合が明確化できる場合は必ず存在するといえる。
図2 不具合の証明の例(バイパスダイオードの不具合)。左はサーモグラフィ画像、右はEL画像によるもの。サーモグラフィ画像より鮮明に不具合が写っていることがわかる(クリックで拡大)出典:アドラーソーラーワークス
太陽電池モジュールの「将来の品質」が分かる
アドラーソーラーワークスが考える最大のEL検査の意義とは、太陽電池モジュールの将来を予測してその品質を確認できることである。例えばクラックは、その断裂の場所や形状によって、将来発電損失を生じるものと生じないものがある。
下の画像(図3)は、セルに生じたクラックが、将来どのように発電損失を引き起こすかの例である。結晶系のモジュールは、セルにバスバーが敷設されており(下記画像では1セルにつき3本)、バスバーに対して垂直にフィンガーバーが細かく敷設されており、セルで発電した電力をフィンガーバーによってバスバーに運ぶことにより集電している。
セルにクラックが入った場合、経年の外的および内的要因による内部破壊でフィンガーバーが断線する可能性が高く、場所や形により発電の損失を起こす可能性がある。
図3 クラックによる発電損実の将来予測。黄色い部分は将来発電が損失する可能性がある部位を示している(クリックで拡大) 出典:アドラーソーラーワークス
図4 左側はバスバー(縦方向に3本)とフィンガーバー(横方向に複数)を示したもの。赤は電気の流れを示す。右側はクラックにより出力低下が生じているモジュール。画像中の黒い部分は発電が損失している(クリックで拡大)出典:アドラーソーラーワークス
このEL検査の特性を生かし、欧州では発電所建設の際にモジュールの受入れ検査を実施することが一部で絶対条件になっている。受入検査とは、保全倉庫や建設現場など、モジュールの受け取りのタイミングでEL検査および出力測定を実施するものだ。主要コンポーネントであるモジュールの品質を担保するのに有効な検査である(図5)。
図5 EL画像検査の結果例(クリックで拡大)出典:アドラーソーラーワークス
本検査を実施することにより、納品メーカー側にも良い緊張感が生まれ、また、購買条件に本検査による品質基準を設けておけば、低品質なモジュールを発電所に設置することを避けることができる。長期にわたる製品信頼性を担保するには必然であると考える。受入れ検査に代表されるモジュールの品質検査はまだ日本ではなじみが薄いが、中古発電所の売買の市場が活発になってくれば、その需要は大きくなっていくだろう。