発電ロスが生じる要因
太陽光発電所の事業主から「予測シミュレーションと実際の発電量の差異が大きい」という相談を受けることがある。本連載の第4回目「思わぬコストを回避する、発電量の簡単な評価方法とは」でも少し触れたが、ほとんどの場合はシミュレーションの精度の問題であり、遮光物による損失要因の見落とし(もしくはそもそも考慮していない)が原因である。
パワーコンディショナは通常、太陽電池アレイから最大電力を得られるように出力電圧を調整するMPPT(最大電力追従制御)を備えているが、セントラルパワーコンディショナのほとんどが1つのMPPTで制御しており、太陽電池アレイに対する影のかかり方によって太陽電池から取り出せない多くの電力が発生する。
発電所の複数カ所で遮光物が存在する場合、影の面積が全体の数%であっても、その数倍の発電損失が生じる可能性があり、大型のセントラルパワーコンディショナの場合、その損失は甚大である。
そもそも上述は設計時、販売時に考慮する事項だが、事業主が認識できずにこのような要因を含んだ発電所を購入してしまった場合、どうすればよいだろうか。
改善にはまず、現状の把握が必須だ。発電ロスの確認には遠遮光、近遮光を把握した上で、単線結線図により影のかかる部位を確認する。
現場で遠遮光、近遮光を把握し、その上で単線結線図により影のかかる部位を確認する 出典:アドラーソーラーワークス
また、三次元シミュレーションなどで年間の遮光状況が把握できればより正確に遮光による損失を予測可能だ。
三次元シミュレーションのイメージ 出典:アドラーソーラーワークス
以降は費用対効果による判断となるが、さまざまな対応が可能な場合も多い。遮光物の除去やアレイ角の変更、移設を検討するのが良いだろう。また、遮光損失によりセントラルインバーター全体の効率を下げているアレイに対して、ストリングパワーコンディショナに変更することが有効な場合もある。ストリングごとにMPPTを備えているものに変更すれば、状況によっては有効な損失低減の手段となる。これについては発電量予測シミュレーションにより正確な損失金額を把握することで、事業主にとって上記案の導入可否が判断できる。
遮光による損失を受けた発電所について、必ずしもその全てが解決できるとは限らないが、損失の低減などにより長期的な収益を伸ばすことが可能なケースは存在する。
今後、中古案件市場が活発化する際に、現状設備の是正により価値が上がる可能性があることを、売る側、買う側は覚えておいて損はないだろう。