ADLER SOLAR WORKS
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2016.09.29

見えない欠陥を可視化する、サーモグラフィ検査の利点

今後ますます重要になっていく太陽光発電所の運用保守。しかし、具体的にどのような点に着目して取り組めば良いのだろうか。本連載では日本で太陽光発電所の運用保守事業を手掛けるアドラーソーラーワークスが、実際の事例を交えながらそのポイントを紹介していく。第2回はサーモグラフィ検査について解説する。


赤外線カメラなどで実施するサーモグラフィ検査の目的は、電気回路の電気の流れを温度分布により可視化し、欠陥を発見することである。太陽光発電システムの場合、電気の流れは日照などの気象条件に左右されるため、常に一定ではない。そのため、サーモグラフィ検査の結果は測定温度ではなく、異常部分と健常部分の温度差から欠陥を把握するほうが望ましい。

 また、太陽光発電システムにおけるサーモグラフィ検査は太陽電池モジュール(以下、モジュール)に対しての実施が一般的である(図1・2)。しかしモジュールのみならず、接続箱、集電盤、PCS(パワーコンディショナー)、高圧受変電設備など、関連設備の回路の不具合を見つける場合にも有効な検査手法だ。

rk_160928_pv01 図1 サーモグラフィによるモジュール接続部(端子)の検査画像 出典:アドラーソーラーワークス

rk_160928_pv03 図2 モジュールのPID検査のイメージ 出典:アドラーソーラーワークス

サーモグラフィ検査は回路の電気の流れに不具合がないかどうかを確認するため、太陽光発電システムが運転している状態で実施する。十分な日射量があることが望ましく、おおむね500W(ワット)/m2(平方メートル)以上の日射条件で測定を実施するのが良いのではないだろうか。

検査の流れを確認

サーモグラフィ検査の実施手順は以下の通りである。

1.発電所の仕様の確認……配置図や単線結線図、各機器仕様書を確認し、測定対象や測定ルートを事前に把握する

rk_160928_pv05 図3 まず配置図や機器の仕様書を確認 出典:アドラーソーラーワークス

2.検査機器の準備……事前に検査機器の動作、バッテリーの充電、画像を保存するストレージカードの確認などを行う

rk_160928_pv06 図4 検査機器の事前確認も重要だ 出典:アドラーソーラーワークス

3.チェックリストの準備……発見した欠陥を記載するためのリストを準備する
4.検査の実施……太陽光発電システムの設置状況によっては高所作業車などの準備が必要な場合がある

rk_160928_pv07 図5 設置状況に合わせた準備を行う 出典:アドラーソーラーワークス

5.検査データの分析……ソフトウェアを使用し、現場で取得したデータから温度差を計算し、欠陥部分の特定を進める。測定温度そのものではなく、異常部分と健常部分の温度差(相対)を捉える

rk_10928_pv08 図6 温度差の計算などは専用のソフトウェアを用いる 出典:アドラーソーラーワークス

検査の流れを確認

サーモグラフィ検査で発見される代表的な欠陥は以下の通りである。

・モジュールのバイパスダイオードの異常
・モジュールのホットスポット
・モジュールのPID現象
・ケーブル接続不良(モジュールのコネクタや延長ケーブル接続部など)
・電気設備の端子台の接続不良(ネジの緩みなど)

接続箱のケーブル接続部の不良

下記の写真(図7)は、サーモグラフィ検査によって接続箱の端子部における接続不良を発見した例である。この例における欠陥部分は工事によって接続された部分ではなく、製造メーカーの造作部分となっている。このことから、端子部の検査範囲はEPCの工事部分だけではなく、機器そのものも含める必要があることがわかる。

rk_160928_pv09 図7 接続箱端子部のサーモグラフィ画像と、当該部の溶解の様子 出典:アドラーソーラーワークス

影による温度分布の異常

サーモグラフィ検査によって得られるモジュールの測定結果には、回路自体の欠陥の他に、外的な要因による温度分布の差異も含まれる。下記の写真(図8)では温度分布の差異が確認されるが、実際にはモジュールの上空に電線が存在しており、その影が抵抗となって表れている。気象状況その他により影の視認が難しいケースも多々あり、検査員は慎重に周囲の状況も含めて観察しておく必要がある。

rk_160928_pv10 図8 セルの発熱の他、視覚では認識が難しい影も確認できる 出典:アドラーソーラーワークス

解析でホットスポットの原因を特定

モジュールの部分的な異常発熱であり、発電量の低下を招く可能性もある「ホットスポット」を検証する場合には、現場で取得したデータをソフトウェアで分析することが不可欠である。下記の画像(図9)に、サーモグラフィによる現場での視認画像と、分析後の画像を比較したものを示す。

rk_160928_pv11 図9 サーモグラフィ検査による現場での視認画像(左)と分析後の画像(右) 出典:アドラーソラーワークス


この例において、現場の視認画像のみではセル単体の発熱と認識されがちだが、実際に分析するとバスバーが発熱していることがわかる。以上のように本件はバスバーの剥離(はくり)によって温度分布の異常が起きていたわけだが、メーカーとの交換交渉などでは、このように詳細かつ具体的なデータを提供した方が交渉がスムーズに進む場合が多い。

 サーモグラフィ検査は太陽光発電設備における発電量への影響のみならず、電気的な安全性の確認に大きく寄与する検査であり、点検で毎回実施するべき項目といえるだろう。なお、次回の連載ではIVカーブ測定について解説する予定だ。