ADLER SOLAR WORKS
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2016.08.26

目視で見つけるトラブルの火種

アドラーソーラーワークス(以下、ASW)では太陽光発電所の定期点検などを手掛けているが、実際に持ち込まれることが多いのは「トラブルが起きてから」の精密点検や不具合点検などの要望である。再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)が始まり、まだ4年しかたっていないが、多くの太陽光発電所でさまざまなトラブルが発生しているようだ。

 現在太陽光発電所において発生しているさまざまな不具合の最大の原因は、設計や施工品質に起因するものがほとんどである。これは、発電所の竣工において、不動産物件などに見られるような、国の標準に対する第三者による検査および評価が法令化されていないことによるものが大きいと考察している。

 ASWでは、IEC62446基準およびヨーロッパにて10年以上前から検証されてきたメニューとして、竣工検査で以下の項目を実施している。

審査

・契約図面
・設計図書、計算書
・主要コンポーネントの仕様確認

検査

・PVアレイの電気的試験、機能試験(IV、サーモグラフィ)
・PCSの電気的試験、機能試験(IEC62446基準)
・地絡、感電などに対する電気的安全性能検査(接地抵抗、絶縁抵抗検査)
・施工の出来形検査
 
本検査を実施した発電所としていない発電所では、その後の運用保守(O&M)中の不具合の発生率に明らかに大きな違いがある。発電所をオーナーのものというだけでなく、再生可能エネルギー電源として日本の資産になると捉えると、系統連系前後の竣工検査は重要と考える。

本連載では、ASWが実際に遭遇した事例を交えながら、こうした太陽光発電所トラブルを未然に防ぐためのO&Mのポイントについて解説していく。第1回目となる今回は、目視検査の要点について解説する。

目視検査のポイント

太陽光発電所で目視検査を行う目的は、大きく以下の2点が挙げられる。

設計資料との差異を目視の範囲で確認すること
目視による施工、出来形における不具合を発見すること
こうした目的に対し、具体的に点検を行うべき箇所としては、

・太陽電池・アレイ・架台
・接続箱・集電箱
・パワーコンディショナ
・その他(機器・配線)
・発電電力
・サイト環境
・などが挙げられる。

 例えば太陽電池モジュールに関して目視でチェックする点としては、受光面の汚れや変色、破損や焼損などがないか、サイト環境では樹木などの遮光物がモジュールに影響を与えていないかなどがある。またフェンスが発電所の外周をきちんと囲っているか、杭基礎に腐食や傾きがないかなども目視で検査できる項目である。

 目視検査を行う場合、SLD(Single Line Diagram、単線結線図)、レイアウト、仕様などの発電所に関連するドキュメントを事前に用意する必要がある(図1)。これをもとに現場で、実際の発電所と施工との整合性を確認していく。

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検査を行う際の道具としては、カメラ、コンパス、ゲートキー、測定キット、などの機器を用意する。これを用いてチェックリストに従い、写真撮影やモジュールの角度の計測などを行っていく(図2)。


rk_160820_taiyou02 図2 検査に使う道具 出典:アドラーソーラーワークス

目視検査で確認すべき箇所について、事前にチェックリストを作成する点も重要なポイントである。全員がチェックリストに沿って確認することで、点検者によって検査内容にばらつきが出てしまうのを防ぐためだ。誰が検査を行っても、同じ箇所を同じチェック項目、同じ検査レベルで判断することは非常に重要である。


よくあるトラブル事例とは

実際の現場では、作成したチェックリストに沿って、架台やモジュール、ゲートなどをチェックしていく。チェック項目は、入り口の施錠の状態、盗難防止のための監視システムの設置、モジュール、架台の取り付け、ケーブリング、フェンスに至るまで多岐にわたる(図3)。

rk_160820_taiyou03 図3 主な検査項目 出典:アドラーソーラーワークス


具体的な設計、施工に起因する不具合の事例として、接続箱の位置が低く浸水しているというものがあった。検査結果を報告するレポートでは、解決策として周辺部材を含めた正しい設計を行い、設置し直すように指摘した。

また、同じく施工に起因するものとして、接続箱が簡易ブロックにおいてあるだけのものもあった。その他に多い例が、金具の取り付け不良である。金具のサイズが合っていない、増し締めができていないといった例が多く、重要なチェックのポイントである(図4)。

rk_160820_taiyou04 図4 金具の取り付け不良は注意したいポイントだ 出典:アドラーソーラーワークス


発電所の“履歴書”の重要性

ASWでは最後に太陽光発電所内でチェックシートに記載した項目と、それに該当する写真とをマッチングさせ、オーナーに提出するレポート(報告書)を作成する。発電所のオーナーが外国人である場合も想定し、日本語に加えて英語で記録する場合もある(図5)。

rk_160820_taiyou05 図5 レポートのイメージ 出典:アドラーソーラーワークス

うしたレポートは単に発電所のオーナーから施工業者に対して発電所の不良箇所を客観的に示すだけでなく、発電所の施工から運転開始までの最初の履歴を残すものとして、重要な価値を持つと考えている。そして、こうしたレポートを年次点検などで継続的に蓄積していくと有用な“履歴書”となり、将来、発電所の売却を検討する場合にも役立つ。


高まる運用保守の重要性

太陽光発電所でさまざまなトラブルが発生していることを受け、経済産業省は2017年4月1日から施行される改正再生可能エネルギー措置法(改正FIT法)で発電所の運用保守に関する規制を強化する見込みだ。

太陽光発電所での問題点は、施工に起因するものも少なくないが、そもそもオーナーが初期品質を理解していないケースも多い。最初に発電所のコンディションを把握していないと、その後の定期点検で重大な不具合が見つかったり、転売時に予定していた金額よりも低く売却せざるをえなくなったりする場合もある。

太陽光発電所の検査にはさまざまな種類があるが、目視検査だけで分かることも非常に多い。まずは目視検査にて発電所の状況を確かめ、その後電気的な計測に移っていくのが望ましいだろう。次回は竣工検査におけるサーモグラフィックカメラを用いた検査について紹介する。